官位(朝廷)

朝廷

「朝廷との交渉となると、私もあまり得意ではないのだが……」
「武士と公家では、口調からして不釣り合いでございますからな。当然でございまする。しかし義輝様、このようなときには私にお任せを」
「おお、そうであったわ。そなたは戦国一の教養の深さであるからな。ではさっそく参内してもらおう」
「ははっ」

「足利家名代として参内いたしました。細川兵部大輔にございまする」
「おお、藤孝殿におじゃりまするか。ささ、こちらへ」
「藤孝殿、よう参られた。先日は良き歌会でおじゃりましたな。また楽しき会を心待ちにしておるぞよ」
「はは。中納言様においてもまた茶なども……」
「うむ、ゆるりと囲むといたしましょうぞ……ときに藤孝殿、こたびは何用でおじゃりますかな」
「じつは、主君・足利義輝様から宮中への献上金を承ってございまする。どうかお納めくださりませ」
「足利殿が。うむ、宮中もなにかと物入りでな……足利殿の帝への忠節、しかと承りましたぞよ。後日、足利殿には官位を下賜しよう。」
「はは、ありがたく存じ奉りまする。では私めは今日はこれにて……。」

「——上様、ただいま戻りましたぞ」
「おお、藤孝。その様子では、首尾は上々であったようだな」
「はは、宮中には私めの歌仲間、茶仲間がおりますゆえ、容易に取り次ぐことができました」
「うむ……、藤孝といえば、宮中に歌の弟子までもいるくらいであるからな。帝までもがその名を聞き及んでいるとは、なんたる智将よ」
「恐縮にござりまする。しかし、私のほかにも、公家に親しいものはおりますぞ」
「ふむ……おお、今川氏真殿は教養が81もあるではないか」
「氏真殿は文化人としては一流で、千首もの和歌を遺し、蹴鞠も上々。公家とは親しゅうございまする。
いかんせん今川義元殿が桶狭間で討ち死になされ、それを継いだため、武将としての評価が難しいのでございまするが、教養は深いといえましょうぞ」
「今川家には今川、武田、北条の三国同盟を提唱した太原雪斎がおったゆえ、今川氏真殿も教養には深いものがあったのでござろう。
交渉術さえ磨くことができれば、交渉ごとでも優位に立てる。無用な戦をせずに済むな」
「小大名を傘下に置くこともやりやすくなりましょう。地味ではありますが、決して軽視できるものではございませぬな」

「ところで藤孝、朝廷より官位を賜ったのだが、いかがいたそうか」
「戦国時代、朝廷の権威は衰えておりますが、それでも官位をもつことは権力の象徴でございまする。
権力的な意味以外にも武将の『政治』を高める効果もありますし、ぜひとも『勲功』が高い家臣にお与えなさりませ」
「なるほど。では朝廷との交渉画面に出る『朝廷権威』とは、官位の威力を表しておったのだな」
「そうでございまする。金銭を献上すれば、朝廷もうるおい、官位にも箔がつくというものでございますぞ」

官位の効果

「官位の効果というと、政治を高めるほかにも、交渉ごとで優位に立てるようであるな」
「はは。左様にございまする。
また、官位の最高位は『関白』でございまするが、これは大名が天下人になることで与えられる資格がありまする。
まずは朝廷と懇意にして、太政大臣などの高い官位につくことが必要でございましょうな」