足利義輝の野望

「上様、いかがいたしましたか」
「うむ……藤孝。実は六角より婚儀を申し込まれてな」
「左様にございまするか。まずは、お決まりの展開でございまするな。
六角定頼殿は観音寺城を本拠とする大名にございまするな。六角氏の最盛期を築いた武将にございまする。
ひとつ申し上げますると、六角定頼殿は楽市の発案者でございまする。その後、織田信長殿がそれを引き継いだのでございまするが……」
「藤孝、なにをぶつぶつと申しておる」
「はは、申し訳ございませぬ。さてこの婚儀、受けて差し支えないものと存じまする。
他家と婚姻を結べば、その大名とは長期の同盟を結んだような状態になりまする。
これは姫が健在なかぎり有効でございまする。さすがに身内が嫁いだ先を攻め滅ぼすような、非情なことはやりませぬゆえ。
足利家は弱小勢力とは申しませぬが、三好家の脅威がありまする。序盤の他家からの申し出は、すべて受けてよろしいでしょう」
「ふむ、では艶姫と申したかな。六角家の姫の輿入れをお受けいたそう」
「はは、おめでとうございまする」

「藤孝、京の様子はいかようか」
「投資の効果は着々と現れておりまする」
「うむ。しかし様々な建物が建てられるようであるが『開発』はせずとも良いのか」
「『開発』には多額の銭がかかりまする。また、今は同盟の効力で『開発』や『建設』ができまするが、同盟の期限が切れるとできなくなりまする。
まずは今ある建物を『投資』したほうが、より市井が賑わいまするゆえ、『開発』は無用なのでございまする」
「あい分かった。ところで藤孝、本願寺より三好と共闘するとの使者が参ったが、そなた、どう思う」
「受諾してよろしゅうございますが、実際に本願寺が攻めるかどうかは分かりませぬ。もし三好との戦いになれば役に立ち、ならずとも損にはなりませぬ」
「金銭や家宝の要求は、難しいであろうな」
「……時に譲ってくれることもありましょうが、期待しないで共闘するのが良うございまする。親密にしておけば、何かと好都合でありまする」
「そうか——まもなく諸大名との同盟も切れる頃だな。藤孝には、さらに働いてもらわなくてはならぬな」
「ははっ」